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第12回●和風への転換した『Ｓ型NEW／ＳIV型』 　2000. 9.18

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●蔵をイメージしたＳ型NEW（２階建）
　コピーは「いよいよ工業化住宅の本命登場」。
　外観も内装も、ＳII型の洋風から和風に変わっている。ただ、白
い外壁と総２階建ての間取りは、従来のいわゆる和風ではなく、広
告通り、蔵のイメージである。



　プランは、32坪、36坪、39坪の３タイプ。標準プランは、39坪タ
イプと思われる。ＳII型が25坪〜33坪であったのに対し、かなり広
くなっている。総２階にしたことによる、２階部分の拡張のみと思
っていい。



　ＳII型の引っ込んだ玄関を、またＳ型の位置に戻し、北面の水回
りに余裕がある。そのため、階段を北側に持ってくることが出来た。
キッチン横のユーティリティはＳII型を受け継ぎ、勝手口と洗濯機
の設置スペースを設けている。２階にもトイレを設けたのも、時代
の変化を感じさせる。



　間取りで特徴的なのは、１階にある３部屋の続き間。リビングと
中央の和室、そして、玄関脇の和室との間も開口部は１間半。それ
ぞれ、３枚襖で仕切られているが、襖は総て開けることが出来る。
この開放感は見事な設計である。玄関脇の和室は下駄箱で45cm削
られた裏側を床の間とするなど、凝ったつくりになっている。
　揚げ足を取るようだが、ここでも標準プラン以外のプランには、
若干の破綻が見られる。36坪タイプは、１階の広い和室空間に比し
て、リビングとキッチンが狭苦しい。２階寝室はＧII型と逆の位置
にあるため、どのプランでも狭くならないのが嬉しい。２階個室が
３尺削られるが、問題は少ない。



　32坪タイプは、１階が和室＋ＬＤＫ。２階に個室３部屋という、
都市部の平均的な住宅プランになっている。欲を言えば、ＳII型と
同じ構成の、39坪タイプの１階に狭い２階を組み合わせた32坪タイ
プがあっても良かったと思う。
　価格は、32坪タイプが1055万円〜1165万円。36坪タイプが1160万
円〜1305万円。39坪タイプが1200万円〜1360万円。
　ＳII型の32坪タイプが855〜865万円なので少々高い気もするが、
全体的な値上がりを考えると、コストパフォーマンスは高い。
　同時期に発売されたＭ型NEW（ＭIII型が中身はほぼ同一）は、
31坪タイプが1145万円〜1265万円。33坪タイプが1185万円〜1310万
円。37坪タイプが1270万円〜1430万円となっている。Ｓ型NEWの
方が若干安い。
「本命登場」という通り、Ｓ型NEWは廉価版のＳ型から、Ｍ型に
並ぶ主流モデルに相応しい間取りになったといえる。あとは、好み
で和風か洋風かで選ぶか。
　1982年6月頃発売。

●和風を踏襲したＳ型NEW平屋
　Ｓ型NEW２階建てタイプから１年以上経って、突如登場したの
が、平屋タイプである。従来のＳ型に平屋モデルがあったわけでは
なく、その後後継モデルも出ていないようだ。






　間取りは、北面の凹凸が取り除かれ、その結果奥行きが若干伸び
ているものの、配置はＳ型NEWの２階建てそのものである。階段
のあったスペースに、３畳〜4.5畳の和室コーナーを置いたのが面白
い。



　２階建てより幅広くなった24坪タイプは、いかにも広く贅沢な印
象を受けるが、Ａ型平屋タイプの標準モデルと同じである。どちら
にせよ、これだけ広い平屋を建てるのは、贅沢かもしれない。



　３部屋の続き間は２階建てタイプ同様だが、玄関脇の和室はシン
プルで、ＯII型のような奥行きのほとんど無い床の間を持っている。
　坪単価は、２階建てタイプよりかなり割高になった。
「最高水準の住機能と伝統の空間が出会いました」のコピー通り、
高級住宅と考えて良さそうだ。
　1983年9月頃発売。

●異端の純和風・ＳIV型
「いつ見ても美しい外観に豪華な空間と設備が納まりました」がコ
ピー。
　ＳIV型は、Ｓ型NEW平屋タイプと同時期に発売されている。本
来なら、平屋もＳIV型に統合するのが筋だが、なぜかそうなって
いない。Ｓ型NEW平屋の間取りは、確かに同型の２階建てに近い
が、フラットな北面などＳIV型に近い部分もあるのだ。
　外観写真は、基本の３プランのどれとも違う。30坪タイプのリビ
ングを１間張り出したもので、見栄えを良くするための撮影用と考
えられる。



　ＳIV型の設計意図は、Ｓ型NEW（２階建て）によって、総２階
モデルばかりなったラインナップに、２階の狭いモデルを再び加え
ようというものだろう。そうした意味で、ＳII型への回帰とも言え
る。
　25坪、28坪、30坪の３プランが用意されているが、ミサワホーム
には珍しく、どのプランにも破綻がない。強いて言えば、最小プラ
ンの完成度が最も高く、広いプランにはユーティリティに余分なス
ペースが出来てしまっている（使い勝手としては有用かもしれない
が）。



　部屋数を必要としない人にとっては、どのプランも広いＬＤＫを
持ち、快適であると思う。玄関脇の和室が南側に３尺張り出してい
るのは、家の幅を抑えるためと、家の南側は空いているのが当たり
前なので土地に余裕があるのが明らかであるからだ。また、道路か
らの視線遮断の意味もある。
　また、玄関脇の和室の天井裏には、特殊物入れがある。２階の個
室から入れるので、いわゆるロフトより使いやすい。



　写真はリビングからキッチンを見たところだが、２重になった天
井の梁がアクセントになって、なかなか見栄えが良い。
　尚、このＳIV型にも後継モデルが存在しないようだ。84年から90
年までの間、どんなマイナーチェンジが行われたのかは分からない
ので、断言はできないのだが……。
　90年、これら企画住宅の総決算となるGOMAS（ゴマス）シリーズ
５モデルが一気に登場するのだが、そこではＳ型NEW２階建てモデ
ルが、ほぼ同じ形のまま復活している。
　1983年9月頃発売。

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