ミサワホームＡ型平屋

第５回●超ロングセラー『Ａ型』平屋タイプ　　　　2000. 9.11

●クラシックにしてモダン
　Ａ型平屋タイプは、同２階建てタイプと同じカタログに載ってい
るが、間取りにも、意匠にも、共通点は見いだせない。
　２階建てタイプは、フラワーボックス、オーバーハング出窓等、
Ｏ型、ＭII型、Ｇ型と意匠を共有している。窓にはそれら共通のシ
ャッターは使われず、独自の折り畳み式雨戸でコストダウンしてい
るが、見た感じはそれらに近い。
　一方の平屋タイプは、雨戸がＳ型、ＳII型（次回以降解説）と共
通しているし、間取りもそれに近い。
　Ａ型平屋タイプが発売されたのは1977年。意匠から見て、２階建
てタイプの発売は、1978年と推測される。

　平屋タイプの外観は、アルミ色のサッシや玄関ドアは70年代的だ
が、シンプルな外壁や屋根は、当時としてはモダンであった。そし
てデザイン的に優れている。今見ても、破綻している部分が見えな
い。
　コピーは「いちばん自由な空間」。
　カタログの説明には「外観デザインなど住まいの基本部分につい
て今後10年間モデルチェンジせずという自信作」「〈ノンフィニッ
シュ仕様〉、専用オプション設備などで住み方はご自由にという思
想。ニューファミリー世代にピッタリの家です」「工業化住宅の利
点を最大限に生かし一般住宅の平均単価より安い価格設定に成功」
とある。
　車や家電とは違い、家はハンドメイドによるところが大きい。よ
って、毎年のようにマイナーチェンジや新製品投入が行われるのが、
メーカー住宅の宿命である。それを、わざわざモデルチェンジしな
いとことわるのだから、本当に自信作だったのだろう。日産マーチ
が10年間モデルチェンジしないと宣伝していたが、車のモデルチェ
ンジサイクルは４～５年。たかだか２倍にすぎない。

●後継モデルの怪
　しかし、Ａ型平屋タイプは1981年にマイナーチェンジされ、『Ａ
型NEW平屋タイプ』となった。ところが、間取りや外観には一切変
化が見えない。上のレンガ色の屋根がその写真だ。サッシの色がブ
ラウンになってはいるが、これはバリエーションの範囲だろう。
　驚くのはこれからである。Ａ型平屋タイプから26年ほど経った後、
『DEBUT ファースト』という平屋モデルが発売された（カタログの
日付は93年5月）が、その写真が下に示す。

　濃紺の屋根にブラックサッシ。壁はミサワホーム従来主流だった
モルタルから、流行りのサイジングへ変化している。
　だが、よく見比べて欲しい。庭の木やテーブルセットから、『Ａ
型NEW平屋タイプ』の当時の写真を、デジタル加工したものだと分
かる。10年どころか20年以上変わっていないということなのだ。
　売れ筋でない商品のモデルハウスは、あまり建てたくないのかも
しれないが、PhotoShopでも使うなら、玄関脇の“Ａ”の文字を型
どったポーチぐらい消しても良かったのではないか。最近の同社の
社員は、20年も前のモデルにこの手の玄関ポーチがつけられていた
という習慣を知らないとも推測できる。
『DEBUT ファースト』のコピーというか、カタログでの宣伝文句は
「卓越した先進技術を結集した住まいです」だ。
「完成度の高い平屋建て「ファースト」。落ち着いた和風の趣とモ
ダンな感覚がとけあったデザインは、まわりの家々にもしっくりと
調和。成長してゆく家族の未来も、定評あるミサワホームの先進技
術がしっかりと見守ります」とある。

●間取りは優れているか
　間取りプランはどれも同じなので『DEBUT ファースト』のものを
載せる（一部）。バリエーションは増加しているが、旧モデルのも
のがそのまま変化なく踏襲されているのが面白い。
『DEBUT ファースト』では24坪タイプを標準と設定している。確か
に、全体の中では最も洗練された間取りだ。しかし、ＬＤＫを中央
に配置し、奥の二部屋へはそこを通らなければ入れないというのは、
感心しない。個室は、玄関脇の１つだけという考え方なのだろう。
　恐らく、長い廊下はスペースの無駄であり、採光の問題もあるか
らこうなったのだと思う。
　収納スペースの少なさも、古い時代のミサワホーム特有の欠点で
ある。従来、嫌っていたウォーキングクロゼットや２～４畳の納戸
も最近のモデルでは採用されているが、昔はそうではなかった。
　このマズさは、狭くなるほど顕著になる。とりわけ最小の12坪タ
イプには疑問を感じる。私は10坪弱で同じ4.5畳＋6畳の家に住んで
いた（1971年築）が、収納スペースも数段多く使い勝手も良かった。
　ライフスタイルも変化し、住宅の考え方自体が大きく変わった現
在、間取りだけは再考願いたいものだ。
　ちなみに、ミサワホームの平屋モデルは、他に1983年9月頃に登
場した『Ｓ型NEW』平屋タイプがある。純和風で畳の部屋が多い
プランで、私の希望通り（笑）ＬＤＫは奥に配置されている。
　残念ながら、それ以外に平屋モデルが登場した形跡は無く、『Ｓ
型NEW』平屋タイプもマイナーチェンジされなかった。Ｓ型系に
ついては次回以降解説予定。

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